みなさん、こんな会話を聞いたことはありませんか?
A:「管理薬剤師になったら残業代が出ないらしいよ」
B:「え?うちの会社は管理薬剤師でも残業代は出てるよ。そんな会社あるの?」
A:「うん、あるよ。管理職だから残業代が出ないって聞いたよ」
B:「え?そうなの?どういうこと??」
さて、これはどういうことなのでしょうか。
実はこれ、会社によって規定がまちまちで、簡単には語れないお話なんです。でも実際のところが気になりますよね。
そこで今回は、管理薬剤師の残業代について、管理職と管理監督者の違いなども織り交ぜながらお話ししていきたいと思います。
まずは管理薬剤師に残業代を支給していない会社が存在するのかというお話しから。結論から申し上げますと、実はかなり存在します。違法じゃないのかというと…これは微妙な話になってきます。
管理薬剤師になる際に相当な賃金の上乗せがあり、さらに残業代が出ないということを、双方納得のうえで契約という形で書面にて交わしていた場合、これは違法行為には当たらない可能性があります。
しかし、特に何の契約も交わさずに口約束のみで管理薬剤師として勤務し残業代が支払われていない場合、管理薬剤師の働き方によっては違法行為とみなされ、残業代の支払い命令が企業に課せられる可能性もあります。
その際は、管理職と管理監督者の微妙な関係が争点になってきますので、次にその違いについてお話ししていきたいと思います。
ここでポイントになってくるのは、『管理』という言葉です。確かに管理薬剤師というと『管理』という言葉が入っているだけに、『管理職』という認識は間違ってはいないでしょう。しかし管理職以上であれば残業代を支払わなくてもいいのかと言えば答えはNOです。
正確には管理監督者に該当すれば残業代を支払う義務は企業にはありません。
要は管理薬剤師という立場が管理監督者に該当するのか否かという点が最も重要になってくるのです。
ここで管理監督者の定義について少しお話ししておきましょう。
管理監督者とは・・・
労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものであり、管理職についたからと言ってそれがイコール管理監督者と呼べるものではありません。
判断基準としては、当該者の地位や職務内容、責任と権限から経営者と一体的な立場にあり、労働条件の決定やその他労務管理を完全に任されているような立場である必要があります。
また、自己の出退勤や労働時間について裁量権を有し、一般の従業員に比べてその地位と権限にふさわしい処遇を与えられている必要があります。
要は企業において、かなり経営的な要素も含んだ重要な役割を果たしており、権限も待遇も与えられている者を指しているのです。
その会社における管理薬剤師の立場が管理監督者としての権限を与えられていると認められる場合は、企業に残業代を支払う義務は発生してきませんが、管理監督者としての権限を与えられていない、いわゆる名ばかり管理職のような立場であった場合、残業代の支払い命令が下される可能性が極めて高くなります。
有名なところでいくと『マクドナルド事件』が代表的な例になります。
名ばかり管理職であり、残業代が支払われないのは違法だとして、元店長が訴訟を起こしたものです。結果として管理監督者の立場にはないとの判決が下され、未払い残業代の支払い命令が下されました。
あの超大手でもあるマクドナルドでもこのような事態が発生するということは、薬局業界においてもあちこちで似たような状況は起こっている可能性があります。
そもそもシフトで勤務体制がカッチリと固定されているような管理薬剤師の方が多いのではないかと思いますので、なかなか管理監督者に該当するような働き方をされているような管理薬剤師の方はいらっしゃらないというのが現実的な見方でしょう。
もし仮に転職をお考えの方は、十分に注意していただき、納得のうえで転職先を決めることができるようにしておいてくださいね。
いかがでしたでしょうか?
管理薬剤師として働くうえで、その働き方によっては支払われるべき残業代があるということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
ぜひ参考にしていただき、納得のいく転職活動をしてくださいね。