薬剤師は引く手あまた。たとえ退職したとしてもまたすぐに次の働き口が見つかる。
これはわれわれ薬剤師業界の常識であり、世間的にはうらやましがられる限りの状況なのではないかと思いますが、「またダメなら転職すればいいや」なんて考えを持っている方は実際どれぐらいいらっしゃるでしょうか?
「もう転職を繰り返したくない」「次の転職先では落ち着きたい」というのが転職を検討されているみなさんのホンネなのではないでしょうか。
そこで今回は薬剤師として最後の転職にするために、今、しっかりと考えておいていただきたいことについてお話ししていきたいと思います。
例えば給料に不満があって転職を決意された場合、勤務条件はさほど変わらないのに、年収が100万円近くアップするような職場に転職できることがわかれば、思わず飛びついてしまいたくなりますよね。もしくは年間休日105日だった方がもっと休める職場が良いと思い、年間休日125日の企業の求人を見つけたとしたら「20日も休みが増えるなんて、それだけでも転職する価値アリだな~」なんてふうに考えてしまったりもしますよね。
確かに条件は大切ですし、それが納得のいくものであれば転職するというのもひとつの考え方でしょう。しかし10年後、20年後はどうでしょうか。転職時には100万円アップした給料も、昇給率が低ければそれ以上なかなか上がらなかったりするケースもあります。年間休日だって転職してしまえばそれが当たり前になってしまい、また違ういろんな不満がどんどん出てくるかもしれません。
「薬剤師として最後の転職にしたい」とお考えの方にとって大切なことは、やはり目先の希望条件だけを考えるのではなく、定年退職する時まで昇給なども含め、長い目で見て働き続けていられる職場であるかどうかということをしっかりと考えておくことです。
これをおろそかにしてしまうとまた必ず何かしらの不満が出てきてしまいます。
例えば全国展開しているような大型チェーンの調剤薬局やドラッグストアで考えてみましょう。全国どこへでも飛び回れるぐらい身が軽い方にとっては、そのことで出世への道が簡単に切り拓けるような会社も実際には存在します。しかし将来、結婚し子供ができた場合同じ働き方ができるでしょうか。
「転勤なく一つの場所で身を固めたい」と会社に相談した途端、そのような会社ではなかなか昇給が難しくなったり、たちまち立場を失ってしまうようなことにもなりかねません。そしてまた転職を余儀なくされる…なんてことにも繋がってしまいます。
このように、今の状況だけですべてを決めてしまうのではなく、遠い未来のことまできちんと思いを巡らせておき、本当にその会社で薬剤師として長く働き続けることが可能かどうかということをきちんと見極めていただく必要があるでしょう。
そして面接に行ってみてさらに印象が良く、何の問題も見つからなかったとします。そのような場合、みなさんが入社されるまでは理想的で完璧な会社に見えるかもしれませんが、みなさんが入社されることによってその会社は確実に環境が変わります。そして周りの方の過ごし方にも変化が生まれます。そんななかで、思い通りにならないことはきっと出てきます。
そんな時に「思っていたのと違う…!」と感じてしまい、そこでまた転職を意識してしまうのではなく、その場で解決できるようにまずは考えることです。「面接の時に聞いていた話と違う」という状況は多かれ少なかれ長い間働いていると必ず訪れます。それはどんな会社に行ったとしても確実に訪れるものだと思っておいて下さい。
ご自身の希望条件は確かに大切です。
しかし、みんなが自分の希望を100%通しているような会社は存在しません。何かしらの我慢や譲り合い、助け合いがそこにはやはり必要なのです。
みなさんが転職されることによってその職場は確実に大きく変化するのです。そしてその変化をスタッフの方は受け止め、さらに職場は変化していきます。
みなさん自身もその変化を受け入れ、いかに順応していくことができるか。そのことが最も大切であり、転職の際にはしっかりと考えておいて欲しいことなのです。
いかがでしたでしょうか。転職を検討されている方は参考にしていただくことができましたでしょうか。
みなさんの納得のいく条件や環境で働かれることはとても大切ですが、長い目で見て環境の変化にも柔軟に対応できるような覚悟をもって転職されることで、転職を繰り返さずに長い間働き続けることが可能になるでしょう。
それではより良い会社にめぐり会っていただけますように心よりお祈りしています!