人生における大きなイベントのひとつと言っても過言ではない転職。
できれば転職せずに済めばいいのかもしれませんが、働いていれば転職を意識するような時って誰にでもありますよね。
今回は、転職を検討されている薬剤師の方の参考になればという思いで、私(40代・男性薬剤師)が転職を決意してから新しい職場に落ち着くまでの流れをお話しをさせて頂きます。
私が以前勤務していた薬局は小規模なもので、常勤は私のみであり、あとはパート薬剤師さん2名、パート事務さん2名という職場でした。そんな薬局で管理薬剤師として15年間勤務していたのですが、なぜ転職を決断するに至ったのか…。順を追ってお話ししていきます。
私の店はもともと処方せん枚数の少ない店舗(40~50枚/日)であり、私とパート薬剤師の方とで十分まわしていけるような店でした。そして特に何の不満もなくそのまま働き続けるつもりでした。
しかし2016年3月のある日、社長が店にやってきて、「これからの時代は施設調剤だ。営業をたくさんかけているから、契約がとれたらこの店でやってくれ」と言われました。当時は外来のみであり、かなり余裕があったことから私は特に何も考えずOKしました。しかしそれが悪夢の始まりだったのです。
正直、施設調剤を舐めていました。来る日も来る日も一包化、定期薬・臨時薬の配達。しかも臨時薬の出し忘れで1日のうちに2~3回配達するような日もよくありました。
そして業務に追い回されながら1年弱が経った2017年1月。なんとか業務をまわせていたこの頃はまだ転職を決意はしていませんでしたが徐々に悩むようにはなってきていました。
そんななか、「大口の新しい施設が取れた!」と社長が嬉しそうにやってきたのです。それは40名収容の老人ホームであり、往診同行の必要がある新規オープンの施設だったのです。
さすがに常勤が私1人では追い付かないため、薬剤師を募集してくれていました。そしてすぐに新しく男性薬剤師のMさん(50代)がやってきてくれました。ちなみにMさんは定時で帰りたいタイプの方だったので、どんなに仕事が残っていてもサッサと帰っていってしまうような方でした。しかし社長は「人を入れたんだからこれで余裕だな」という感じの反応でした。私的には「悩みの種がもうひとつ増えた」という感覚でした。
その新しい施設の入居者の増えるペースは比較的早く、月に7~8人程度。そして入居の度に持参薬の整理や居宅療養管理指導算定のための契約、往診同行、報告書の作成など、確実に取られる時間が増えていき、さらにどんどん残業も膨らんでいきました。当時は月の残業が100時間を超えることもありました。
Mさんはもちろん働き方を変えてはくれません。マイペースであり、定時にはサッサと帰って行かれるのです。後から聞いた話なのですが、面接の際、社長に「ここの店長は残業が大好きで基本任せていればいいから、残業は一切しなくていいよ」と言われていたようです。そのことを知って、私は完全に頭に血がのぼってしまいました。残業が大好きだなんて言ったこともなければむしろしたくも無いし、何よりそんなこと私の知らないところで話していたなんて、愕然としました。このころ、私はかなり転職を意識しだしていました。
そしてGW。新しい施設を始める前から計画していた家族旅行の日。私は施設から連絡が来ないことを祈りながら、近場へ2泊3日の旅行に出かけました。なかなか旅行に連れて行ってあげることもできなかったので、子供たち(小学校1年と4年)もとても楽しみにしていました。
しかしあの5月4日の悪夢の電話がすべてを台無しにしてしまったのです。
「急きょ、往診することになったから来て欲しい。入居者の方の予定が変わって今日入居になったみたい。持参薬がぐちゃぐちゃらしくどうしようもないって。」
ドクターから直々に電話でした。旅行2日目、朝食のバイキング会場での出来事…。あの時の子供たちと妻の顔が忘れられません。下の子は泣いていました。
その時、私は転職を決意しました。
GWに出勤したことについてはそのGW明けに社長に話したのですが、それがきっかけと思われたくなかったこともあり、日を改めて「退職したい」とのことを申し出ました。
社長はビックリして「まだまだこれからじゃないか。考え直してくれ。」と、引き止めてこられました。しかし私自身はもう決意していたので、その意思を変えるつもりはまったくありませんでした。理由も聞かれましたが、当たり障りのないことを並べるにとどめました。狭い業界ですからあまり悪く言うのは得策ではありませんしね。
もちろんMさんは管理薬剤師をするつもりがないとのことで、管理薬剤師候補を募集してくれました。しかし、そう簡単には見つかりません。
しばらくは転職活動をすることもできず、『患者さんのため』と思いながらハードな日々を過ごしました。
ようやく管理薬剤師候補の目処が立った9月。薬剤師転職サイトに登録しました。
希望年収、希望勤務地、希望職種などを担当の方に伝え、紹介をしてもらいながら管理薬剤師の引継ぎ作業を行っていきました。忙しかったため、なかなか面接に行くという日を設けることができませんでしたが、ようやく次のステップに進めると思うと、少し気持ちが軽くなっていきました。
そして私自身の退職日も正式に決まりました。
9月末、長年お世話になった職場に別れを告げ、有休消化に入りました。そしてすぐに転職活動開始です。登録後、紹介会社からたくさんの案件を紹介してもらっていましたが、すべてが理想通りの職場というわけではありませんでした。しかし、その中でも気になる案件が2~3件見つかったので、応募したい旨、担当者の方にお話しし、面接を受けることになりました。
立て続けに面接を受けることになったのですが、その中で残業が月に5時間程度であり、年収もちょっとアップするような職場を見つけることができ、その職場に転職することを決めました。
ちなみに面接内容としては自分のアピールポイントを売り込むというよりは、なぜその会社を選んだのか、今までどのような働き方をしてきたのか、これからどんなことがしたいのか…などの話が多く、面接の場で「ぜひ我が社を選んでいただきたい」という感じでした。「40代でもこんなに引く手あまたなんだなぁ」と改めて薬剤師の国家資格の力を実感するとともに、薬学部に通わせてくれた親に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
12月の入職に向けてこれといった準備はしていなかったのですが、有休消化中にリベンジ旅行に行きました。悪夢のGWの時とは違って、Drから電話がかかってくる心配もなく、子供たちと心の底から旅行を楽しむことができました。あの時のカニは最高においしかったですね。家族みんなで笑顔のまま旅行を満喫することができました。
そして2017年12月1日。新しい職場へ初めての出勤。
新人の頃に戻った気持ちで新たな職場に足を踏み入れました。分包機の使い方(メーカーが違いました)から水剤の作り方など、その店独自のルールをキチンと覚えていき、1~2週間で職場に馴染むことができたと思います。暖かく迎え入れてくれた職場のスタッフのみなさんには感謝感謝です。
今の職場は個人在宅はありますが、施設調剤や往診同行などもなく、ほぼ定時に帰ることのできる職場です。職場のみんながその意識をもっているため、無駄に残業をするようなこともありません。もちろん必要な時はみんなで協力し合いながら残ることもありますけどね。
いずれにしても、誰か特定の人だけがしんどい思いをするような空気はまったくなく、みんなで助け合えるような環境が整っている職場に転職することができて本当に良かったと思っています。
子供たちと過ごす時間が増えたことがなによりも嬉しいことなんですけどね。
私自身、転職をすることによって本当に人生が変わったと思っています。家族とのかけがえのない時間は今しかありません。子供が大きくなれば、またいろんなことにチャレンジしたいとは思っていますが、人生において大切なモノのために決断する必要がある時もあると思います。
まさに今、転職について悩まれている方がいらっしゃれば私の話を少しでも参考にしていただき、より充実した日々を過ごされますことを心よりお祈りしています!